先輩、私だけに赤く染まって

一人で来てくれたのは助かった。


これで他に人なんていたら逃げ出してた自信ある。


ていうか名前、覚えてくれたんだ。


そんな小さなことでさえ嬉しい。廊下に立っていた私に声を掛けてくれたことも。


「何してたの?今日当番じゃないよね」


昨日のことなんて無かったみたいに、普通の顔して話しかけてくる。


そりゃ、先輩は何とも思ってないんだろうけど。


どうやったらまたあの顔を見れるんだろう。


この表情を崩したい。私だけに、余裕がない顔を見せてほしい。


先輩といるとイケナイ感情が湧いてくる。


「先輩に、会いに来ました」


「そうなの?嬉しいな」


…拍子抜け。全く動揺してない。

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