先輩、私だけに赤く染まって
二人で見た夏
伝えたいもの
◇◇
「穂乃果、ずっと家にいないで何処か出かけてきたら?」
夏休みが始まって一週間程が経った。
特に何もするわけでもなく毎日ゴロゴロしている私を嫌そうに見て、母が言った。
だって。涼子は毎日部活だし、先輩からはあれから連絡ないし。
本来なら海とかに行ってキャーキャー騒ぐんであろう夏休みは、私には程遠い出来事だ。
こういうとき友達少ない自分が少し恨めしい。
お母さんに無理やりソファから起こされて、仕方なく出かける準備を始める。
適当な服を引っ掛けて、日焼け止めはしっかり塗った。
「行ってきまーす」
乗り切らない口調で言った私に、お母さんがニコニコと手を振る。
…随分とご機嫌だこと。そんなに私が外に出るのが嬉しいのか。