先輩、私だけに赤く染まって

「村田くん、何してるの?」


何してるの、なんて彼が勉強なり読書なり普通にしていたらそんなこと尋ねない。


だけど彼は明らかに、本を盾にしてその向こうをコソコソと見ていた。


私の声にバッと振り向いて、大袈裟なくらい驚いた顔をした村田くんは、口元に指を立てて私に静かにするよう要求した。


図書館なんだから、私だってうるさくするつもりはないのに。


だけど焦っている様子を見て、名前を呼んだのを申し訳なく思った。


村田くんが気にしているのは周りの目ではなくて、ある誰かのようだった。


私の手を引っ張って机の影に隠させる。


「ちょっ、何…!」


つい立てのあるテーブルに座っていた村田くんは、私をしゃがませた後にカウンター席の方を指差した。

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