先輩、私だけに赤く染まって

なんと声をかけたらいいか分からないよ。


「どんな顔してんの。言っとくけど偶然だから。しかも俺が先にここ座ってたし」


「あ、そうなの。良かった」


私の考えていることなどお見通しとでも言うように、呆れた顔をして説明した。


どうやら私の早とちりだったようだ。


もう一度彼女の方を見る。


肩で切り揃えられた髪が良く似合う、快活そうな女の子。


隣に座る男子に笑いかける笑顔は可愛らしくて、チラリと見える八重歯が無邪気さを演出していた。


「もしかして隣に座ってるのって…」


「そう、今の彼氏」


夏休みだからなのか、前からなのかは分からないけど、地毛よりもはるかに明るい髪色。


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