先輩、私だけに赤く染まって
ていうか二回も彼女と新しい男が一緒にいる現場を見てしまうなんて、村田くんよっぽど運が悪いのね。
村田くんがあの二人に見えたと言った、壊せない仲とやらは私には伝わらなかった。
今日初めて見たカップルなのだから当たり前と言えばそうだけど。
そうこうしているうちに、二人が立ち上がる素振りを見せた。
まずい、帰るのかもしれない。そうなったら私たちがいるテーブルの横を通ってしまう。
「村田くん…!」
焦って彼の方を見ると、私に言われるまでもなく気付いていて、二人で顔を見合わせる。
どうしよう。慌てて立ち上がろうものなら余計に気付かれてしまう。
なにより二人が座っていた場所とこのテーブルは今からどこかに逃げられるほど遠くない。
本でも読んでるフリして顔を伏せるしか方法はない。
結局何の捻りもない打開策しか思い付かなくて、それを村田くんに伝えるために私は彼の方を見た。