先輩、私だけに赤く染まって
どちらの気持ちも分かるから、何も言ってあげられない。
私が何を伝えられるんだ。
早瀬先輩の望みを無視して、無理やり私に向き合わせて。今もまた苦しめているというのに。
自分の好きを抑えられなかった。好きという言葉を聞いて、引くことなんて出来なかった。
だから村田くんは凄い。相手の幸せを願って、彼女の前から潔く姿を消したんだから。
分かっていても正しいことが出来ないなんてよくあることだ。
苦しみながらも、その正しい選択をした村田くんは十分に凄いと思う。
私は村田くんと別れて図書館を出た。
ただ本を借りるだけのはずが、予想外の出来事に出くわしてしまった。
さっきよりも太陽が高く登っていて、焼けるような暑さになっていた。
家で待っているアイスの為に、私は一心に歩いた。