先輩、私だけに赤く染まって

ハナミズキの髪飾り


「ねえ穂乃果、明日浴衣買いに行こうか」


借りてきた本をリビングで読んでいた私をご機嫌に眺めながら、お母さんが言う。


さっき図書館でポスターを見ながら先輩のことを考えていたのを思い出してドキッとする。


「どうしたの、急に」


確かに浴衣は中学のときに買ったものしかないけど。


私から頼んだわけでもないのに言い出すなんて、お母さんらしくない。


「だって今年こそ夏祭り行くでしょ?」


…ああ、そういうことか。


誰と、とは言わないけど和樹とを望んでいるのが丸分かりだ。


この間私と和樹が一緒にいるのを見たから、この機会に聞いてみたのだろう。


「あのさお母さん。私、和樹とは何でもないよ、これから先も恋人になることはないと思う」

< 276 / 317 >

この作品をシェア

pagetop