先輩、私だけに赤く染まって
ハナミズキの髪飾り
「ねえ穂乃果、明日浴衣買いに行こうか」
借りてきた本をリビングで読んでいた私をご機嫌に眺めながら、お母さんが言う。
さっき図書館でポスターを見ながら先輩のことを考えていたのを思い出してドキッとする。
「どうしたの、急に」
確かに浴衣は中学のときに買ったものしかないけど。
私から頼んだわけでもないのに言い出すなんて、お母さんらしくない。
「だって今年こそ夏祭り行くでしょ?」
…ああ、そういうことか。
誰と、とは言わないけど和樹とを望んでいるのが丸分かりだ。
この間私と和樹が一緒にいるのを見たから、この機会に聞いてみたのだろう。
「あのさお母さん。私、和樹とは何でもないよ、これから先も恋人になることはないと思う」