先輩、私だけに赤く染まって
静かな住宅街に下駄のカランコロンという心地良い音が響く。
駅に近付くに連れて、夏祭りに向かうらしき人たちの姿が多くなってきた。
浴衣で一人で電車に乗るのは恥ずかしかったけど、周りにも浴衣を着てる人が沢山いたからまだ気にしないでいられた。
一駅だけ電車に揺られて、ほとんどの人が一斉にその駅で降りる。
そしてその多くの人に流されるまま、お祭り会場まで歩いた。
約束の十分前に先輩との待ち合わせ場所に着いた。
今一度携帯を確認するけど新着メールはない。
考えていることは皆んな同じなのか、辺りには待ち合わせをしている人で溢れている。
私は先輩の姿を見逃さないように、注意深く周りを見回していた。