先輩、私だけに赤く染まって

「好きです、ずっと好きです。先輩に人殺しはさせませんから」


「…ほんと忘れて、あのときはおかしかったんだ」


後悔たっぷりと言ったように低く呟いた声が耳に触れる。


「そんな先輩も好きです」


もう何にも遠慮せずこの気持ちを口にしていいんだ。


そう思うと何度だって言いたくなる。


耳元で先輩が息を呑むのが分かった。そして悶えるように静かに息を吐く。


「こんな私で良ければ、よろしくお願いします」


先輩の腕の中から顔を出すと、優しく微笑んでいる先輩と目が合った。


あ、可愛いなって思ってる目でしょ。


もうこんなこと思うのも自意識過剰じゃないんだ。


「杉野さんじゃなきゃダメみたいだ」

< 304 / 317 >

この作品をシェア

pagetop