先輩、私だけに赤く染まって
そう言って柔らかに笑う。
たまに見せる幸薄い顔じゃない。慈愛に溢れた、何より私が好きな先輩。
こんなに幸せなことがあっていいんだろうか。
少し前の私には考えるのもおこがましかった。
いざこの幸せを目の当たりにすると、むしろ現実味がない気がしてくる。
「ヒューッ!お幸せにー!」
そう遠くない場所から大声で叫ばれたそれは、明らかに私たちに向けてだった。
その声の主を見ると、お酒に酔っ払っているのかブンブンと手を大きく振っている。
ていうかあの人、私のことをナンパしてきた人じゃん。
一緒にいる女性がやめなよと振る手を止めさせる。
あれからナンパ成功したんだ。