先輩、私だけに赤く染まって
だけど始業式の日から図書室に来る人なんてそんなに多くはなくて、ひたすら事務作業をしていた。
携帯もロッカーに置いてきてしまったから先輩からの返事が来ているかも確認できない。
ちゃんと見てくれていれば良いんだけど…。
「早瀬先輩と上手くいったみたいだな」
貸し出しカードにハンコをつきながら村田くんが話しかける。
「おかげさまで。ありがとね」
「杉野が頑張ったからだよ。おめでとう」
村田くんは最初から最後まで良い人だったな。彼がいなかったら先輩と付き合えていたか分からない。
そんな話をしていると、久しぶりに図書室に人が入ってきた。
「え、早瀬先輩」
何週間かぶりの早瀬先輩の姿がそこにあった。