先輩、私だけに赤く染まって
先輩の姿を認識して胸が高鳴る。
私のメール、見なかったんだろうか。
「ごめんなさい。図書当番だったらしくて、一応メールしたんですけど…」
「見たよ。でもやっぱり一緒に帰りたいと思って、来ちゃった」
ああ、甘い。夏祭りの日から、何かが吹っ切れたように先輩は甘かった。
その度に私は平静を保つのが大変だった。
隣にいる村田くんがニヤッと面白そうに笑ったのが分かる。
散々心配をかけたから何も文句なんて言えないんだけどさ。
「あ、やばーい。練習に遅れちゃう。すみませんが先輩、残りの時間お願いしてもいいですか?」
気でも遣ったつもりなのか、めちゃくちゃ棒読みでそんなことを言い出す。