先輩、私だけに赤く染まって
一直線に目が合う。
間に遮るものは何もない。レンズも、瞬きも、私たちの間にはなかった。
まるで時間が止まったみたいに目が逸らせない。
周りの音は何も聞こえなくて、この世界に私たちしかいないみたいだった。
熱い想いだけが、溢れるほど湧いてくる。
こんなんじゃ足りない。もっとって。
本能のまま、体を近づけそうになった直前。
「見過ぎ。穴あいちゃうよ」
先輩が手のひらを私の目に被せた。
視界は真っ暗なのに、手から伝わる熱気と鼓動が、先輩も同じ気持ちなんじゃないかと錯覚しそうになる。
すぐにパッと離れた手が風で乱れた私の前髪を直してくれた。