先輩、私だけに赤く染まって
先輩に出会うまで、恋愛に対する意欲が全く湧かなかった。
恋愛って傷付いて、壊し合って、全て無くしてしまうような、そんなイメージだったから。
存在全てが愛おしい、そんな風に思える人に出会ったことがなかったんだ。
「ちょっとー、先輩を思い出してニヤけるのやめてよ」
涼子の声で現実に引き戻される。
そんなに顔、緩んでたかな?
なんだか先輩と知り合ってから妄想の世界にトリップするの、多い気がする。
「私、幸せ…って顔してたよ」
似ても似つかない私の真似をする。
ていうかそれ、完全にバカにしてるでしょ。
「そういうこと言ったら、稲原先輩とのこと協力しないからね」