先輩、私だけに赤く染まって

なんて、冗談を言う。


そもそも協力したくても出来ないほど私と先輩との距離は遠いけど。


「えっごめん、許して穂乃果ちゃん」


そう猫撫で声で言うもんだから、可笑しくって笑ってしまった。


涼子が私のことを本気で心配してくれていたのを知っているから、軽口を叩き合っても彼女以上に信頼できる人はいない。


「一緒に頑張ろうね、涼子」


人には散々言うくせに、自分のこととなると途端に自信がなくなるんだから。


私たちは似たもの同士だ。


「本当にすごいよ穂乃果は…」


「案外、稲原先輩も涼子のこと知ってるかもよ?何たって陸上部のエースだし」


涼子が顔の前でブンブンと否定するように手を振った。


私は結構本気で言ったんだけど、涼子が余りにも否定するからその話題はお開きになった。


< 50 / 317 >

この作品をシェア

pagetop