先輩、私だけに赤く染まって
「そ、そういう村田くんは最近元気なくない?」
後ろを向いたまま、手を止めない村田くんに話題を変える。
教室で見かける彼は、明らかに様子が違った。
作り笑いや、何処か一点を見つめていたり。
長い溜め息を吐き、肩をガックシと落としてこちらを振り返った。
「…分かる?」
私は無言で頷く。
「実はさ、彼女と上手くいってなくて」
村田くん、彼女いたんだ。知らなかった。
「この学校の子?」
「いや、中学の同級生」
ああ通りで、知らない訳だ。
「喧嘩でもしたの?」
「そんな覚えはないんだよな。だけどなんか、よそよそしい感じがして」