先輩、私だけに赤く染まって
図書委員に二人で決まったときは、こんな話を村田くんとするときが来るとは思ってもみなかったな。
彼女の話をする村田くんは、酷く弱々しく見えた。
「ダメだよそんなに弱気になっちゃ。好きならちゃんと気持ちを伝えなきゃ」
やけに背中が小さく見える村田くんは、眉尻を下げて口を一文字に結んだ。
「…そうだよな。ありがとう、杉野」
何度か自分に言い聞かせるように頷いて、また本棚に向き合った。
誰も傷付かない恋なんてない。
誰かが笑っている裏で、誰かが悲しんでいる。
そんなこともう懲り懲りなのに、それでも心はどうしようもなく惹かれてしまう。
苦しいくらい、欲してしまう。