先輩、私だけに赤く染まって
ちょっと惜しいことしたな。
そのまま止まらなかったら、事故として抱き付けたのに。
なんてしたたかなことを考えているのを、もちろん表には出さない。
「はい、何ですか?」
「杉野さんにお願いがあるんだけど…」
お願い?と私は首を傾げる。
「この後、予定ある?」
先輩のその言葉に私は目を輝かせ、その首を勢いよく横に振る。
先輩の為になら私の時間なんていくらでも捧げます。
そんな私を見て、先輩は良かったってちょっと安心したように笑った。
ルンルンとスキップしたい気分を必死に抑えながら、平静を装って先輩の後をついて行く。
途中教室に寄ってバッグを持って。
急に止まった先輩の背中に顔をぶつけそうになった。