からふる。~第23話~
「こんにちは」


「あらら、もしかしてあなたは...」


「私、こちらの寮生の黒羽玲央くんとお付き合いさせて頂いている前園桃子と申します。本日は黒羽くんのために夕飯を作って来たんです。私もご一緒してよろしいですか?」


「あら、やだあ。ありがとね。さあさ、上がって上がって」



食堂で凜くんとおやつをしながらひと休みしていると、前園さんがお見えになった。


今日は上下白を貴重とした制服をお召しになっていて可愛らしいけど、ロリータファッションよりは落ち着いている。



「こんにちは、紗彩さん」


「前園さん、わざわざありがとうございます」


「カノジョとしてお付き合いしている方の健康のために一矢報いるのは当然のことです。それよりクロはどこですか?まだ帰宅していないのですか?」



その問いに答えたのは黒羽くんのお隣のクラスの凜くんだった。



「なんかぁ、黒ちゃん課題の居残りしてたよぉ。桃ちゃんと黒ちゃんは一緒に帰ったりしないのぉ?」


「そうですね。私はいつも学校にお迎えが来ておりますので一緒には帰れないのです。それに普段私は華道部で活動しておりますので帰る時間が違うのです」


「へえ。華道部かい?華やかでいいねえ」



沼口さんがお茶を出しにやって来た。



「うちの茶葉は安物だからお嬢様仕様じゃないけど勘弁しておくれ」


「お気になさらず。頂きますね」



所作の1つ1つが美しい。


それに引き換え私はがさつになってきた。


この生活に慣れすぎるのも良くない。



「美味しいお茶ですね。淹れ方が正しければ美味しくなるものですよ。それは人間も一緒です。正しく教育し、正しく導けば正しく育つ。そして立派な大人として生きていけるようになるんです」


「この歳でそんなこと言う人初めてだ。気に入ったよ」


「確かにぃジャスでも言わないもんねぇ」


「ジャズ?」


「緑川正義。愛称がジャスだよぉ」


「緑川正義先輩って元生徒会長の?」


「そうそう。その通り」



< 2 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop