魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜
1*魔王様のレストランへようこそ
「わぁっ、すごい綺麗な花畑!噂通りの絶景だわ…!」
耳触りのいい車輪の音と、一定間隔で揺れる座席。
ここは、ペルグレッド王国を横断する列車の車内だ。
そして、窓の外にカメラを構えて興奮交じりにシャッターをきる少女は、この私。ミレーナである。
私は、この姿になる前…つまり前世ではフォトグラファーとして日本で暮らしていた。商業写真から個人の結婚式まで幅広く仕事をしており、そこそこ依頼も多かった。
ビジネスだけでなく、私生活でも写真を撮ることが好きで、観光名所を飛び回ってはシャッターをきり、ブログにあげていたことを今でもよく思い出す。
しかし、そんな趣味を楽しんでいた最中、海外の遺跡で運悪く落盤事故に遭遇し、二十五歳の若さで未来を閉ざされることとなったのだ。
だが、ふと気付いてみれば自然豊かな異世界に転生しており、前世の記憶が戻った幼少期から再びカメラを持つ生活。
初めは家族や友人のことを思い出し泣いていたが、生まれ変わったからには前向きに第二の人生を生きていこうと決めた私は、自分でも驚くほどポジティブな性格だった。
そして十七歳となった今日。私は、いつか訪れたいと熱望していた絶景を眺め、感嘆の声をあげている。
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