魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜
『昨今、巷で名がささやかれているレストランをご存知だろうか。有名な某グルメ雑誌でも特集が組まれた《レクエルド》は、魔界をコンセプトにした新時代の飲食店である。
しかし、騙されてはいけない。レストランの従業員は皆、本物の魔物であり、人間を襲う凶悪な存在なのだ。
ボーイである少年は人間に擬態をして油断を誘う化け猫だ。隙を見せようものなら身包みを剥がされ、金目のものを盗みとる。
シェフのヴァンパイアは無差別に人間に噛みつき、その血を奪う恐ろしい男。実際に被害あった人間は数えきれず、その全員が口止めをされて、被害届を出せば命を奪うと脅されていた。
パティシエールのゴルゴーンは、その名の通り目の合った相手を石に変える力を持つようだ。気に入らない奴を片っ端から石像にした彼女の罪は重く、ここ数年で行方知れずになった人間は皆、このゴルゴーンが石にして砕いたのではないかとの見解もささやかれた。
そして、もっとも凶悪なのが店主の悪魔である。彼は敵だと認識した人間は大人も子どもも見境なく鋭い爪で切り裂く横暴な魔物だ。《レクエルド》がある町の住人が消えたのも、この悪魔の存在が大きい。
また、最近では死神の少年も出入りするようになり、この悪魔に指示されるがままに都市の人間の命を奪っているのだ。
ヒトの心を持たない魔物を野放しにしているのは許されるのか。
共存、そしてこの店の在り方を今一度問う必要があるだろう。』