魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜

「なによ、これ…!」


怒りに声が震えた。

ひどいのはでっち上げだ。店を貶めようとわざとけなしているようにしか思えない。

しかし、恐ろしいのは文だけではなかった。

口元を血で汚しながら男性に牙を剥くヴァルトさんと、石像の前で髪の毛を蛇に変えたメディさん、そして大鎌を振り上げるリム君をとらえた写真が添えられている。

それは、紛れもなく本人だ。

こんな写真、一体どうやって?

証拠として載せられている写真は、真実味を持たせる効果が高い。だが、ヴァルトさんがヒトを襲ったのは七十年前。メディさんも、人間を石に変えたのは痴話喧嘩の時だけだ。

あたかも本当に危害を加えているようなイメージを植え付けかねない記事に背筋が凍る。


「ミレーナ。どうした?」


ルキが真剣な声で声をかけた。

ただならぬ雰囲気に、店に集まった彼らが一斉にこちらを向いている。


「見て、ミレーナ!店のニコッターが、すごいことになってるよ…!」


パソコンでアプリを開いたケットは、コメントの多さに驚いているようだ。

その意味を察した瞬間、思考が止まる。


「すごいや!今までの倍以上の人たちが見てくれてるんだね!僕らちゃんと覚えたよ。これが“バズる”っていうんでしょう?」

「ううん、違うのケット。これは真逆」


猫目がきょとんとした時、カウンターから画面を覗き込んだヴァルトさんが低く唸った。


「炎上しているね。…すごいな、長く生きているけど、ここまで罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせられたのは初めてだよ」

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