魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜
その時、椅子に乗ったケットがふわりと頭を撫でた。
穏やかな表情の彼は、温かい口調でささやく。
「ミレーナはやっぱり優しいね。僕らのために泣いてくれるんだ」
負の感情なんてひとつもない優しい言葉が耳に届いた。
「涙を拭いて?僕は、何を言われたって平気だよ。ただ店を取り壊されるのを待つだけだった無力な僕に力をくれたのはミレーナだよ」
すると、それに続いてヴァルトさんとメディさんも口々に告げる。
「過去から逃げていた俺がまた人と関わろうと思えたのは、ミレーナちゃんのおかげだよ」
「そうよ!私に人生を変えるくらいの素敵な思い出をくれたのも貴方よ、ミレーナちゃん」
ソファに掛けていたマクさんとラウガーさんは、落ち着いた声で励ましてくれた。
「魔物のためにあそこまで懸命になれる人間はそうそういないよ。君は間違っていない。胸を張りなさい」
「そうそう!ミレーナさんが過去で頑張ってくれたこと、ちゃんと知ってるからねぇ」
静かに歩み寄り、そっと震える手を取ったリム君は、初めて微笑みを見せる。
「君がいたから、エスターを見送ることができた。そばにいてくれてありがとう、ミレーナ」
ルキが目の前に屈んだ。
長い指で涙を拭った彼は、まっすぐこちらを見つめたまま視線を逸らさなかった。
「顔を上げろ。ここにお前を責める奴なんかひとりもいない。お前が縁を繋いでくれたから、俺たちはここにいられるんだ」