魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜
あんな記事、全部デタラメだ。魔物達はこんなに優しい。どうして、ヒトよりも温かい心を持った彼らが非難されなくてはいけないんだ。
このまま黙っているわけにはいかない…!
その時、椅子から降りたったケットが、レストランの扉に手をかけた。
「大丈夫だよ、ミレーナ。味方は僕ら以外にもいるみたいだから」
開いた扉の向こうにいたのは、電話を片手に持ったグレンダさんだった。
「グレンダさん…!どうしてここに?」
「週刊誌の記事を見て、いてもたってもいられなくなったんです。meetの記事もケチをつけられたみたいだし、売られた喧嘩は買わないとね」
店と繋がったままだった電話を切り、キリッとした笑みを浮かべる彼女。
ムジナが、店に向かおうとするグレンダさんを見つけて幽霊機関車に乗せてくれたらしい。
その後ろには、レティさん、マオットさん、そしてエスターちゃんによく似た年配の女性が立っている。
「大好きなお店が窮地に立たされているのは見過ごせなくて。微力ですが、駆けつけました」
「大切な婚約者のことをいいように書かれて、黙っているような男じゃないよ。力にならせてほしい」
初めて見る年配の女性は、私に向かって小さくお辞儀をした。
「初めまして。私は、エスターの母のルーリオです」
「お母さまでしたか…!初めまして、ミレーナと申します」
「はい。死神の彼から名前を聞いて、あなたのことは存じ上げております。娘の笑顔をくれたレストランを取り壊させるわけにはいきません。出来る限りの協力させていただきます」
それは、今まで出会ってきた魔物に理解のある人間達だった。
不思議な縁で結ばれた人々が《レクエルド》に集結する。
「ミレーナさん、反撃を始めましょう。仕掛けるなら今です」
グレンダさんの力強い声が店内に響いた。
ここから、立ち退き撤回の大勝負が幕を開けたのだ。