魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜
ミレーナとして生まれた家の両親はとても優しく、カメラを片手に出かけたいという頼みをきいてくれた。
幼い頃から外に出たがったため、両親は三つ歳上の幼なじみであるシグレに子守を頼むことが多く、近所の人達には本当の兄妹のように見えていたらしい。
だが、今日は違う。
ひとりで旅に出てやろう、と目論んだ私は、シグレに内緒で地元を飛び出してきたのだ。
シグレは世話焼き体質の心配性で、昔から私が好奇心のままに走り回ると「おい、また迷子になるだろう!勝手に遠くへ行くな」と掴まれて、絶好のシャッターチャンスを逃すことが多々あった。
私はもう十七歳。子守が必要な年齢ではない上に、前世記憶を持つ中身は二十五歳だ。手のかかる妹扱いをされるのは、まっぴらごめんである。
なんて自由な旅なんだろう。趣味を満喫するのって、最高!
首から下げたカメラは数ある候補から選び抜いた相棒で、片時も離さない宝物だ。
そのうえ、この世界のカメラは最先端で、シャッターをきった後にコピーボタンを押すと、デジタルプリントの写真が出てくる仕様が組み込まれている。その画質は一眼レフで撮った写真と遜色ない。
カメラ好きの私にとっては、たまらない代物だった。