魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜


「お客さん、終点ですよぉ」


ゆさゆさと肩を揺すられ、はっ!とした。

レトロな雰囲気のある座席と車掌さんの困ったような表情が見える。


「えっ、終点!?」

「あぁ。ぐっすり寝てたようだね」


その声に窓の外を見ると、空は真っ暗。腕時計の針は午後八時を指している。

嘘でしょう。

ほんの数十分うたた寝するつもりが、国の端っこに着くまで爆睡してしまうなんて。促されるまま列車を降りると、そこは森に囲まれた無人駅だった。

駅の看板は薄れて文字も読めないほど劣化しており、屋根もボロボロで、コンクリートの壁にはヒビが入っている。

なんだろう、このさびれた感じ。

廃墟というにはまだ惜しいが、そこは誰一人として利用客はいないであろう辺鄙(へんぴ)な土地だった。

なんとなくノスタルジーな雰囲気に写真家の血が騒いだところで、列車の扉がガチャンと閉まる。振り向くと、元来た線路を走っていく列車が見えた。


あれ?普通なら、次の運行時間まで駅にとどまるはずなのに。


思わず首を傾げると、掲示板に貼られた時刻表が視界に映った。


「嘘!この駅、一日二本しか電車がないの!?」


かろうじて見える時刻は、朝と夜の二本のみ。最終列車は午後八時だ。

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