魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜
まさか、私、帰れない…?
気付いた頃には遅かった。
乗ってきた列車は遥か彼方で、隣の駅まではかなり距離があるようだ。鬱蒼と茂った森に囲まれた夜道をひとりで歩くのも気が進まない。
最悪だ。こんなことになるなんて思ってもみなかった。頭の中のシグレが『ほら、言わんこっちゃない!俺を連れて行かないからこんなことに!』と叫んでいる。
ため息をついて辺りを見回す。
まだ午後八時だというのに、通りかかる車の影もない。ヒッチハイクも無理そうだ。
こうなってしまったなら仕方ない。顔を上げてみれば、空気が澄んでいるからか、星が綺麗だ。満天の星空を撮るために来たと思えば心が軽い。
持ち前の前向きな性分で落ち込んだ気持ちを吹き飛ばした私は、ベンチにでも腰かけようと歩き出した。
「ひっ!?」
その時、視界に飛び込んできたのは数メートル先のベンチに寝転ぶ人の影。黒い服が景色と同化して、全く気が付かなかった。