好きになりたくなかった。
「あー、うぜー」
居酒屋にきて富田はアホみたいに酒を頼んではすぐに飲み干した。
切れ長の目は少しだけ優しくなり、顔も赤い。
相当酔ってきたなコイツ、、、。
「牧野も飲めよ〜」
そう言われ、手元にあったサワーを口に運ぶ。私はお酒が強くないから、たくさん飲むとコイツのこと面倒見切れないと思い、気を張っていた。
富田は酔うとダル絡みが多くなり、かまってちゃんになるのだ。それは以前学科の飲み会でもそうだったから十分に理解してる。
「…いいよ、飲みな。飲んで忘れちゃいな」
赤くなった富田の頬に手を伸ばすと、富田はその手を取り握り返した。
…富田の手が、熱い。
「お前の手、冷たくて気持ちいい」
「富田が熱いだけだよ」
「あーー、そっか」
手を握ったまま、ウトウトし始める富田。
私の手を離すことはなさそうだった。
…側から見たら彼氏彼女みたいなんだよなあ、多分。そう思いながら、潰れかけている富田のことを見つめた。