キミのこと痛いほどよく分かる
「ねえ、先生。
先生は不思議な力が使えるの?」

「不思議な力?」

「私の怪我を全部治したでしょ。
しかも一度のことじゃない。」

先生は何も言わなかった。

でも、その表情には少し悲しい気持ちが読み取れる。

「もし、私がその力に甘んじて、何度も何度も同じこと、繰り返したら、先生は治してくれる?」

「...。」

「冗談だよ。
って言い切れればいいけどね。」

「...。」

「先生はがんばって
って言ってくれたけど、私にはもう無理だよ。
また、同じことの繰り返し。」

「...。」

「だから甘えてもいいでしょ。
また苦しんでも助けてくれるんだから。
...。」

先生は静かに、横たわっている私の頭を撫でた。

「...!」

「よく、がんばったね。」

すうっと今まで感じていただるさや、心の淀みが消え去ってゆく。

これが、この人の力なの...?

「先生...なんだか眠く...。」

「おやすみ。
ゆっくり休んでね。」

心地の良い闇に包まれていく。

こんなに静かで穏やかな夜は、久しぶりだ。
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