キミのこと痛いほどよく分かる
ね、こ...。

まだ、生きて...。

次の日の学校の帰り道。

昨日の親子が歩いていた。

石を投げられた母猫は、何もなかったかのように元気そうだった。

「...。」

そして。

こちらを見かけると、ゆっくりではあるが、
昨日のような甘くて優しい声を出しながら、
近づいてくる...。

ああ......。

よか、っ、た...。

無事で良かった...。

心の底から、安堵が広がっていく。

まだ、生きてた。。

元気だった...。

ゆっくりと撫でてやると、ぐるぐると甘えた声で気持ち良さそうにしている。

「あ...よかった...。
よかった...よかった...。
よかった...よ...。」

にゃあ。

と、嬉しそうな声がきこえてきた。

「よかった...
よかったぁあぁぁぁっ....、
あ...
ごめん、なさい...。
...ごめ...
っごめんなさい!!!」

ほんとうに後悔した。

本当に、昨日までの自分が憎くて憎くて嫌いになった。

「ごめん...ごめんね。」

何度も、撫でたり、抱きしめたりして謝った。

「怪我は...、
痛いところは...
ないの...?」

そう言って、身体を触って、昨日どこに石があったのか、どの程度痛かったのか確認した。

倍にして自分に
し返してやろうと思って。

でも、
石は実際には、当たっていなかったらしい。

当たったと思ったのは、急に石を投げられて、驚いて飛び上がっただけのようだ。

「こころ...は...?
びっくりしたし、痛かったよね...?」

「にゃあ。」

平気、と言っているようにきこえた。

でも、やっぱり...。

「やっぱり、痛かったんじゃないか...。
ちゃんと...ちゃんと言ってよ...。」

僕が、暗い顔をしていたのが気になって、元気を出してもらおうと近づいたらしい。

どうして、拒絶されたのか。

それが、ちゃんと分からなくて。

苦しんでいたのが、

こちらに、伝わってきた。

「苦しいね...。痛かったね...。
ほんとうに...ごめん。」


それから、決めたんだ。

この子を傷つけてしまった分。

この過ちが許されるまで。

ずっと。

誰かを助け続けるんだ
って...。

例え、それが間違っていたのだとしても。

その罪は全部、自分が背負っていくって。
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