仮の総長様は向日葵のような元姫さまを溺愛せずはいられない。


恐る恐るスライドをし、「もしもし……」と声を出す。すると、男性の低い声が聞こえた。


『……朝倉 榛名(あさくら はるな)さんのご家族の携帯で間違いないでしょうか?』

「はい、そうですけど……」


『私、青田総合病院の笹川と申しますがただいま朝倉 榛名さんが事故に遭われ搬送されてきまして、彼女の保有している荷物のスマートフォンからお電話しています。』


─︎─︎─︎え?

お母さんが、事故に遭って運ばれた……?



『─︎─︎─︎大変危険な状態でして、すぐにきていただけますか?』


危険な状態……? 何それ……そんなの、嘘だよ。
朝はとても、元気だったのに。
いつもと同じように「行ってらっしゃい」って見送ってくれたのに……。

いつもと同じ……太陽みたいに笑ってくれて、安心したのを覚えてるのに……どうして?


「い、今すぐ行きますっ」


それだけ言い、電話を切った。
そして……スマホと財布、鍵だけ持って家を出た。







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