仮の総長様は向日葵のような元姫さまを溺愛せずはいられない。
偽りの元姫、消えない過去。
【陽愛 side】
「ねぇ、陽平くんどこに向かってるの?」
あれから手を引かれてどこかに向かい中……そのどこかが分からないけれど。
「ナイショ」
「えー……ってこの階段上るの?」
「うん。嫌ならお姫様抱っこしてあげようか?」
なんてイタズラぽい笑みで私を見る。そんな少しの仕草にキュンとしてしまう私は、本気で恋する乙女だ。
「陽愛、こっちおいで」
手が離れていたからか、少しだけ距離があった。だから、疑いもしないで彼に近づくと…………。
「……ぇ、わぁ! ちょっ、陽平くん!!」
「シー……ここ響くから」
彼に口を塞がれた瞬間に、私の身体は思考停止。だ、だって……。
キスはこれまでもしてるけど、抱っこされながらのキスは初めてだったから。