仮の総長様は向日葵のような元姫さまを溺愛せずはいられない。
「……手術は、無事成功しました。」
「ありがとうございます。」
理玖はスッと立ち上がり、お辞儀をした。
「すぐに目が覚めると思いますよ。あの、朝倉陽愛さんのご家族の方は来られますか?」
保護者ってことだよな……?
連絡先知らない……その前に陽愛ちゃんの連絡先も知らない。
陽なら知ってるかもしれないと思い、陽に話しかけようとした時。
「遅れてすみません…保護者代理の者です。」
え……悠介さん⁇保護者代理……ってどういう……?
彼女のご両親は……?
そう陽に聞こうと思ったのに初耳なのか驚いている。結構仲良かった理玖も知らないらしいし……そういえば彼女のこと何も知らない。
知ろうともしなかった。
そんなことを頭で巡らせていると、もう悠介さんは医師と相談室のような場所へ入って行った。
「……俺は、何にも知らないんだな」
そして聞こえたのは、切なく笑う陽の声だけだった。それに対して答える人なんてこの中にはいなかった。