仮の総長様は向日葵のような元姫さまを溺愛せずはいられない。
「……ありがとう、朝日奈(あさひな)さん。」
看護師と親しげな感じに会話しているところから知り合いなのかとも見える。
「いいわよ、わたしにはこんなことしか出来ないから……力になれることはなりたいって思っていたの。特別だからね、11時には戻りなさいよ?」
「うん。」
「じゃあ、私は失礼します。」
朝日奈さんという看護師は、ナースステーションに帰って行った。すると陽愛は近くのソファに座り話し始めた。
「……私、陽平くんと出会う数日前にお母さんが死んじゃったの。その時にお世話になったのがさっきの朝日奈さん。その後すぐに葬式があって……家に帰って、誰もいなくてなのにお母さんの面影がある家にいるのが辛かったんだ。だから、海に行って……そこで陽平くんに会った。」
だからあの日、海に……?
「……あ、お父さんも私が小さい頃に事故で亡くなってるの。だから私、家族はいないんだよね。」
じゃあ身内はいないってことだよな?
だから、悠介さんは保護者代理って言ってたのか。