仮の総長様は向日葵のような元姫さまを溺愛せずはいられない。
ひとり、お母さんとの思い出が詰まった家にいるのはつらくて。
辛くて辛くて、
悲しいような苦しくて……いろいろな感情が渦巻いた。
だから私は、夜なのに家を飛び出した。
どこに向かっているのか自分でもわからない。
だけど、ひたすらに走ってどこかに向かって走った。
━︎━︎そして、着いた場所は以前お母さんと来たことのある海だった。
海岸の砂浜にどこから来たのかわからないけれど大きな大木が横たわっていて、その大木に座り、海を眺めていると月が海に映って光っていてなんだか眩しく感じる。
なんでかな……涙が溢れ出す。涙、止まらないや。
「……おまえ、なんで泣いてるの?」
……え?
1人のはずなのに、誰かの声が聞こえてきた。