仮の総長様は向日葵のような元姫さまを溺愛せずはいられない。
本当の日向総長と、私。
【陽平 side】
陽愛のことを置いて、バイクを走らせる。
彼女の辛そうに叫んだ姿が忘れられない。俺はどうするべきだったんだろうか。
彼女の1人になりたいと言う考えを優先させた……そんなの綺麗事に過ぎないよな。
『今は大事な女がいるんだ、もう付き纏うのはやめてくれ』
『……なら今、キスしてくれたら諦めるわ。キスをしてくれなきゃ、彼女がどうなっても知らないけど?』
それだけは避けたくて数時間前にしたことがこんなにも後悔するなんて……。
コイツは、陽愛と出会う前からずっと付きまとってきた女。
出会う前……俺には、失うものは何もなかったからそんなこと普通にやっていた。
ただ、日向会があればそれだけでいいと思っていた。だけど……今は失いたくない人が、愛してる人がいるんだから簡単にキスなんてしちゃ、いけないのに。
「バカだ……」
「本当にな」
返ってくるはずのない声が聞こえて驚いていると、その人物は俺の前に来た。
「昇……」
「つらくて龍太さんのお見舞いにきたのか?」
バレてる。
バレてる。
無意識のうちに向かっていたのは龍太さんが入院している病院だった。
「……まぁ、陽らしいけど。そうだ、これだけ言っとくわ。“龍太さんが待ってる”から早く行けよ」
待ってる……?
まさか、龍太さんの意識が戻ったとか?