モノクロリバーシブル
潤がいなくても、僕には弥勒がいれば十分なんだ。

「……羨ましい……」

僕は気が付いたら、そう呟いていたんだ。……え?僕、今なんて?

「春明?」

心配そうな顔で、弥勒は僕を見る。

「あれ?無意識に呟いたのかな?」

自分でも何で呟いたのか、分からない。

「……とりあえず、帰ろうか」

そう弥勒に微笑んだ瞬間、僕の意識は途切れた。



目を覚ますと、僕は自分の家の部屋の布団で横になっていた。

「……気が付いた?」

体を起こすと声をかけられて、僕は声をした方を見る。弥勒が、壁にもたれて立っていた。

「ねぇ」

僕と弥勒の声が重なる。少し間を置いた後、弥勒が口を開いた。

「お前、変だったけど大丈夫か?」

「変?」

「うん。ひどく混乱してるようだったから、気絶させたんだけどね……」

「え……?」

弥勒の言葉に、僕はそう言うことしか出来ない。確か、弥勒と帰ろうとして……それで目の前が真っ暗に……。

そのことを正直に話すと、弥勒はあごに手を置いた。

「……あの話、本当……だったのか?」

「あの話?」

僕が首を傾げると、弥勒は無言で頷いた後、口を開く。

「数日前、夢に神様が現れて……また春明にも連絡するって言ってたよ」
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