私は月夜に恋をする
この前数ヶ月ぶりに父が帰ってきた時に
たまたま母の出張が重なってしこたま暴力を受けたばかりなのだ。
全身が痛くて仕方がない。

母にこの傷を見せたくなくて、
父の本性を教えたくなくて、傷つけたくなくて、まだ1度も誰かに相談したことは無かった。

そもそも相談する相手がいるのだろうか。

「──────秋」

ふと頭に過ぎった少年の姿に頭を横に振る。
彼は気まぐれで私のそばにいるだけだ。
私は彼の、なんでもない話をぼんやり聞くだけ。
ただ、それだけの関係。
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