私は月夜に恋をする
きっと、彼もこの傷のことを知ってしまえば引いて私のそばから離れるに違いない。

浴槽から宛もなく伸ばした手は
宙を掻いて湯船に沈む。

いっその事、この傷を見せつけてしまおうか。
そうしたらこのなんとも言えない関係は終わって、また私は1人になれる。

でも、もしもそれを秋が誰かに言いふらしたら?

噂話はとてつもないスピードで広まり、やがて確実に母の元へと届くだろう。
考えただけで悪寒がした。
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