私は月夜に恋をする
「......また、話を聞いてもらっても良い?」
「いいよ」

みーちゃんを寝かしつけてから、
彼の重たい口が開いた。

「僕ね、皆が思ってるような奴じゃないんだ。皆が思ってるような、
優しい奴でもないし、勉強も運動も人一倍練習しないと身につかない。
いつも笑顔でいるのだって辛い。
でも、皆が求めてるのはこの笑顔だろ?」

それから秋は普段は話さなかった自分自身の事について語ってくれた。

喧嘩けんかして離婚した家族から逃げるように一人暮らしを始めた事。
本当は許してない人の事。
嫌だと思った事。
悲しかった事。
それでも笑う事しか出来ない自分が、
本当は何より、誰より嫌いだって事。
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