私は月夜に恋をする
「立ち聞きしてて悪かったな、秋」

青年は立ち上がってすぐ、秋に頭を下げて謝った。それが彼なりの誠意だった。

「ううん、いいよ、大丈夫」

ハリボテの笑顔を即座に作る、秋の悪い癖を見ると、陽介先輩は珍しく苛立ったような声を上げて、秋を軽くはたいた。

「前から思ってたけどよ、
その胡散臭い笑顔は好きになれねーよ
いい加減自分に素直になったらどうだ?」

親友の口から初めて聞いたであろう怒りの声に一瞬、ぽかんと口を開いてから少年は盛大に吹き出した。

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