私は月夜に恋をする
私はこのフェンスから飛び降りるという行為が何となく好きで
放課後に来ては決まってフェンスに登って座り、部活に入っていない他学年の生徒達が帰っていくのを上から見届けてはアスファルトの上に飛び降りる。
それが日課になっていた。

この高校、東岡《ひがしおか》高等学校の屋上は常に解放されているものの、
老朽化が進んでいるのと、綺麗な校舎とは違い少し古びた恐ろしげな雰囲気とが相まって他の生徒が来ることは無かった。

唯一1人になれる場所。
自由な解放された気分になれるお気に入りの場所だった。

友達も大して多くもなく、良い成績を取ってる訳でもないので先生との仲も良くもなく、
誰も私を咎める者は居ない。

「またフェンスから飛び降りてたの?」

ただ1人を除いて。
「いつもの事でしょ」
声のした方を振り返ると、見慣れた赤茶色の髪を風に弄ばれながら物陰からひょっこりとこちらを覗く少年の姿があった。

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