私は月夜に恋をする
待ってる。君から教えてくれるまで
無理に聞いたりなんかしない。
命が辛くなくなるまで待ってる
だから......今はこうさせて」

かすれたその声に、どきりとした。
この人は、この人なら大丈夫。
この人になら、引かれてもいい。
初めてそう思えた。
やっとそう思える人に出会えた。

「秋の言った通りだよ。私ね、お父さんからずっと虐待を受けてたの。
まだ傷も残ってる」

やんわりと少年の腕を解いて
下着を残して服を脱いでみせた。
全身を覆う痣、タバコの火傷の跡に
秋の息を飲む声が聞こえる。
"ごめんね"そう口にした途端、涙が溢れ出た。

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