私は月夜に恋をする
「友達の家に泊まったってお父さんから聞いたわ。ちゃんといい子にしてた?」

父が"言うなよ"とばかりに母の背後から睨みをきかせてくるが、
深呼吸をして、再び大丈夫。と自分に言い聞かせて母の顔を見上げる。

「お母さんに、ずっと知って欲しかった。
私ね、5年前からずっと、
お父さん......ううん、この男から暴力を受けてきたの」

上の服を脱いで見せると、
父の顔色がさっと変わるのが目に入った。
母は驚愕に目を見開いて固まっている。
醜い全身の傷跡。
お母さんだけには見せたくなかった。
傷つけたくなかった。
だけど、もう隠すのも嫌だった。
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