私は月夜に恋をする
母の言葉に急かされるように
父は軽く荷物をまとめて家を出ていった。
"気づいてやれなくてごめんねぇ"
そう泣きじゃくる彼女の背中を撫でて
"こちらこそずっと言えなくてごめんなさい"と謝る。

「本当はね、唐揚げとか、油っこいものが苦手だったの」
「うん」
「お風呂も、たまには一緒に入りたかったけど、この傷があったから......」
「いいの、いいのよ」
「あとね、友達っていうのは、男友達の事なの」
「もしかして、命の好きな人なの?」
「......うん、私を救ってくれた、大事な人なの。今、外に居るから、紹介してもいい?」
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