私は月夜に恋をする
「命ってばそんなに泣くんだね」
「っ、秋の分も、泣いてるの」

いつかの言葉のやりとりを真似て秋がふざけるものだから、
怒り気味にそう返した。
大きくて優しい手のひらが、そっと私の涙を拭っていく。

「秋......」
「父さん、母さん」

私の母が連絡を取ってくれたのであろう、
慌てた様子の男性と女性が病室にはいってきて、秋の顔を見るなり涙を流す。
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