清廉で愛おしい泡沫の夏
慣れ
 「ふふっ。懲りないわね。」
 「そういう問題じゃねーんだよ!」
 明日から来ないかも、と思っていたけれど、心配は無用だったようで、要は、あれからも、毎日、朝のお迎えに来てくれていた。
 …美泡に遊ばれるのに耐えながら。

 あれから、昼休みはいつも、仁と渚と4人で食べていた。
 この前のように、廉たちが迎えに来ることもない。
 でも、あれから少し、仁と渚が遠慮がちになった気がする。
 …気のせいだといいんだけど。

 そして、毎日倉庫にも通っていた。
 放課後になると、廉と総が教室まで来てくれる。
 廉のバイクに乗るのも緊張しなくなったし、凝視されるのにも随分慣れた。
 それに、再試組の勉強もずっと見続けた。
 ずっと下で勉強を教えていたので、最初にいった部屋には、あれから入っていない。
 そして、まさに今日が、


 「「「「合格しました!!!!」」」」
 再試当日。
 いつもの挨拶をし、廉が上の部屋に入ってから、再試組は、叫んだ。
 「おめでとうー!!」
 私が教えた人たちは、全員合格したようだ。
 先生として、なんとも誇らしいね。。!
 「美夏さん、今までありがとうございました!」
 「美夏ちゃんのおかげだよ~!!」
 自分の得意なことで、人の役に立てて嬉しいし、感謝されるのも嬉しい!
 でも結局、だれも私を呼び捨てにしなかったな。。。
 
 「おい、帰るぞ。」
 再試組と、いろんなおしゃべりをしていたら、いつの間にか、2時間ほど経っていたようだ。
 廉は、あれから、私にあまり近づかなくなった。
 帰る時も、少し遠くから今みたいに呼びかける。
 …このあいだのは、言い過ぎたかな?いや、でもなぁ。。。
 と、少し、考えている。

 「…今日、なんか早くない?」
 「…別に。勉強教えるわけでもねーのに長くいる必要もねーだろ。」
 廉とは、少しだけ、会話をできるようになった。
 廉に少し慣れてきたのと、このあいだの罪悪感からか、、、
 まあ、会話とはいっても、続きはしないけど。。。













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