結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~
お店は回転が速く十分も待たずにカウンター席につけた。

「あ、美味し」

私はひとくちずるずるすすり、飲み込むなり感想を呟いた。びっくり。すごく美味しい。

「だろう?」

隣で、榛名先輩が目を細めている。

「美味しい。美味しいです。チャーシューも分厚くて食べ応え満点、極太面が濃いスープにめちゃくちゃ絡みますね~」
「……食レポはよどみないな」

う、と私は麺を飲み込み損ねて詰まった。いつもプレゼンで突っかかって慌てている私を、知っているものね。

「すまない。意地悪を言ったわけじゃない。行永が無邪気な顔をしてくれると嬉しい」

私の頬にひと筋落ちてきた髪を先輩の長い指が耳の上に掻き上げてくれる。無造作な接触に心臓がどきんと跳ねた。先輩はまったく気にしていない様子。

「先輩、いいお店を教えてくださってありがとうございます。次に来たときはつけ麺をたのみたいなあ」
「つけ麺は魚介とんこつでがらっと味が違う。美味いよ」

先輩が頷き、ぼそっと言った。

「また来よう」

“ふたりで”って言葉にしなくても語尾についたのがわかる。先輩、なんかすごく温かなムード。
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