結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~
イタリアンは美味しくて量もたっぷりで大満足だった。コースではなくアラカルトで頼み、気負わない雰囲気で食事したのがよかった。榛名先輩の表情は終始柔らかく、私があれやこれや喋ってもうるさがらず聞いてくれる。
こうして『お付き合い』してみるまでわからなかったけれど、榛名先輩は穏やかな性質の人だ。優しく気遣いができ、そしてちょっとだけズレたところのある人だ。
たとえば、私が好きだと言えば、デザートを三種類も頼んでしまったり、それを私が笑っても「え?」と真顔で聞き返してきたりする人。
オフィスの榛名先輩はとびきり格好よくてザ・できる男!って感じだけど、プライベートの榛名先輩は別な意味でいい。年上の男性に言っちゃまずいかもだけど、なんか可愛いんだよなあ。
「傑さん、ご馳走様でした」
イタリアンから出て私は頭を下げた。お高い食事をおごってもらっちゃった。
「里乃子が喜んでくれるならいい」
「次の機会は私がご馳走しますからね」
「気にするな」
言葉すくなに言う彼は、もう私と別れる時間が近いのを感じているのだろう。横顔がちょっとさみしげ。
すると私たちの横を一台の車がそこそこのスピードで通り過ぎた。イタリアンは裏路地にあるので、こんなところまで入ってくる車は稀だ。そして、運が悪かった。今日は昼頃一度雨が降り、整備されていない路地には大きな水たまりができていた。
私は完全に反応できなかったけれど、榛名先輩は咄嗟に私と車の間に入り、泥水から庇ってくれた。
こうして『お付き合い』してみるまでわからなかったけれど、榛名先輩は穏やかな性質の人だ。優しく気遣いができ、そしてちょっとだけズレたところのある人だ。
たとえば、私が好きだと言えば、デザートを三種類も頼んでしまったり、それを私が笑っても「え?」と真顔で聞き返してきたりする人。
オフィスの榛名先輩はとびきり格好よくてザ・できる男!って感じだけど、プライベートの榛名先輩は別な意味でいい。年上の男性に言っちゃまずいかもだけど、なんか可愛いんだよなあ。
「傑さん、ご馳走様でした」
イタリアンから出て私は頭を下げた。お高い食事をおごってもらっちゃった。
「里乃子が喜んでくれるならいい」
「次の機会は私がご馳走しますからね」
「気にするな」
言葉すくなに言う彼は、もう私と別れる時間が近いのを感じているのだろう。横顔がちょっとさみしげ。
すると私たちの横を一台の車がそこそこのスピードで通り過ぎた。イタリアンは裏路地にあるので、こんなところまで入ってくる車は稀だ。そして、運が悪かった。今日は昼頃一度雨が降り、整備されていない路地には大きな水たまりができていた。
私は完全に反応できなかったけれど、榛名先輩は咄嗟に私と車の間に入り、泥水から庇ってくれた。