結婚前提で頼む～一途な御曹司の強引な求愛～

「ありがとう」

コーヒーを受け取って先輩が言う。

「幸せだ」

隣に座った私に向かって、マグカップを手に先輩が呟いた。

「里乃子の部屋にいて、手料理をご馳走になって、今も一緒にいる。幸せだ」

ふわふわ柔らかな空気に、かーっと頬が熱くなる。榛名先輩の“好き”は一直線なのだ。恥ずかしくて、だけど嬉しくて、そして戸惑ってしまう。

「傑さん……あの、本当に私でいいんですか？」
「どうしてそんなことを言う」
「だって、傑さんにつり合わないです。仕事はできないし、美人でもなんでもないし、普通の家庭の生まれだし」

榛名先輩はきょとんとして、答える。

「家柄は関係ない。俺は実家と疎遠だしな。里乃子の顔は美人というか可愛い。小動物みたいな愛らしさがある。表情がくるくる変わるのをずっと見ていたい。半年、一緒にいながらそう思っていた。もっといろんな表情を見たいと。里乃子が俺だけを見つめてくれたらいいと」

頬の熱さが目元や耳まで広がる。どこまで私を言葉で甘やかすんだろう。

「あと、仕事のことだが、里乃子は落ちこぼれだとか仕事ができないとかでチームをはずされたわけじゃない」
「へ？」

私はまだ赤い顔のまま、榛名先輩を見つめる。